有料職業紹介事業の許可は、一度取得すれば永久に維持できるというものではありません。
許可取得後に法令違反などがあった場合には、有料職業紹介事業の許可が取り消されることがあります。
では、実際にはどのようなケースで許可が取り消されているのでしょうか。
職業安定法には許可取消しの規定がありますが、条文だけを読んでも具体的な状況は分かりにくいと思います。
そこで今回は、2026年に実際に公表された許可取消しの事例を取り上げながら、その原因や、許可取得後に注意すべき事項について解説します。
1.有料職業紹介事業の許可が取り消される3つのケース
有料職業紹介事業の許可取消しについては、職業安定法第32条の9に定められています。
同条では、主に次の3つの場合に、厚生労働大臣が許可を取り消すことができるとされています。
- ① 法令上の欠格事由に該当した場合:許可を受けている事業者やその役員などについて、法律で定められた欠格事由に該当する場合
- ② 職業安定法等に違反した場合:職業安定法や一定の労働者派遣法の規定、これらに基づく命令・処分に違反した場合
- ③ 許可条件に違反した場合:許可を受ける際に付された条件に違反した場合
ただし、これらに関係する問題が生じたからといって、すべてのケースで直ちに許可が取り消されるわけではありません。
法令上の取消事由に該当するかどうかや、違反の内容・程度などに基づいて行政処分が判断されます。
実際には、許可取消しだけでなく、事業停止命令や改善命令などの処分が行われる場合もあります。
2.2026年10月28日、入管法違反によって許可が取り消された事例
まず、2026年10月28日に公表された許可取消し事例をご紹介します。
この事例では、三重県の事業者について、有料職業紹介事業と労働者派遣事業の両方の許可が取り消されました。
許可取消しの原因は不法就労助長に関する入管法違反
公表された処分理由によると、この会社は出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2第1項第1号の罪により罰金刑に処せられ、2026年2月4日に刑が確定していました。
この結果、職業安定法第32条第1号に規定する欠格事由に該当することとなり、2026年10月28日付で許可が取り消されています。
ここで重要なのは、直接的な職業安定法違反ではなく、入管法違反によって有料職業紹介事業の許可が取り消されたという点です。
入管法第73条の2は、外国人に不法就労活動をさせる行為などについて罰則を定めています。
例えば、外国人に認められていない就労活動をさせる行為などが問題となります。
なお、この事例で公表されたのは、該当条項による有罪・罰金刑の確定と、それに伴う欠格事由への該当です。具体的な不法就労の態様まで詳細に公表されているわけではありません。
3.2026年には他にも同様の許可取消しが行われている
2026年の許可取消し事例は、10月28日のものだけではありません。
同年には、次のような事例も公表されています。
| 処分日 | 主な処分理由 |
|---|---|
| 2026年4月24日 | 法人の役員が拘禁刑以上の刑に処せられ、欠格事由に該当 |
| 2026年9月25日 | 入管法違反による罰金刑が確定し、欠格事由に該当 |
| 2026年10月28日 | 入管法違反による罰金刑が確定し、欠格事由に該当 |
※いずれも厚生労働省が公表した実際の許可取消し事例です。2026年10月29日時点で確認した事例を掲載しており、同年のすべての処分を網羅するものではありません。
このように、近年の公表事例を見ても、職業紹介事業の運営に直接関係する違反だけでなく、刑事処分によって欠格事由に該当することが、許可取消しの原因となっています。
なお、これらの事例だけから、すべての許可取消しが同じ理由で行われていると判断することはできません。
重要なのは、許可取得後も会社や役員の適格性を維持する必要があるという点です。
4.なぜ職業紹介事業とは別の法律違反でも取消しになるのか
有料職業紹介事業の許可申請では、申請する法人や役員について、法令上の欠格事由に該当しないことが求められます。
そして、欠格事由に該当しないことが必要なのは、許可申請時だけではありません。
許可取得後に欠格事由に該当するようになった場合も、許可取消しの対象となることがあります。
例えば、職業紹介事業以外の事業であっても、特定の法令違反によって刑事処分を受け、その処分が職業安定法上の欠格事由に該当する場合があります。
ここで注意していただきたいのは、すべての法律違反や罰金刑が有料職業紹介事業の欠格事由になるわけではないことです。
職業安定法第32条では、刑の種類や違反した法令、刑の執行後の経過期間などについて、具体的な欠格事由が定められています。
そのため、何らかの違反があったという事実だけで、許可取消しになるかどうかを一律に判断することはできません。
また、法人の役員が欠格事由に該当することで、法人自身の許可にも影響が及ぶ場合がある点にも注意が必要です。
5.職業安定法違反によっても許可が取り消される可能性がある
ここまで紹介した事例はいずれも欠格事由への該当を理由とするものでしたが、当然ながら、職業紹介事業そのものに関する法令違反についても注意が必要です。
例えば、次のような行為は職業安定法上の問題となります。
- 名義貸し:許可を受けた会社の名義を他人に使用させ、職業紹介事業を行わせること
- 禁止されている職業の紹介:法律上紹介できない建設業務や港湾運送業務への職業紹介を行うこと
- 違法な手数料の徴収:法律で認められていない手数料や報酬を徴収すること
- 虚偽の広告・条件の提示:事実と異なる求人条件などによって職業紹介を行うこと
- 法令上の帳簿や報告に関する違反:必要な帳簿書類を作成しないことや、虚偽の報告を行うこと
- 許可条件違反:許可時に付された条件に反する方法で事業を運営すること
ただし、上記の行為については、それぞれ適用される法令や罰則、行政処分の要件が異なります。
すべての違反が直ちに許可取消しになるという意味ではありません。
違反内容や重大性などによっては、改善命令や事業停止命令などの行政処分が検討される場合もあります。
紹介が禁止される職種については、「有料職業紹介事業で紹介できない職種」をご覧ください。
6.許可取消し・事業停止命令・改善命令の違い
有料職業紹介事業に関する行政処分には、許可取消し以外にも、事業停止命令や改善命令などがあります。
これらは同じものではありません。
| 行政処分 | 内容 |
|---|---|
| 許可取消し | 有料職業紹介事業を継続することが適当でない場合などに、許可を取り消す処分 |
| 事業停止命令 | 一定期間、事業の全部または一部の停止を命じる処分 |
| 改善命令 | 法令違反を起こすような事業運営方法について、改善措置を命じる処分 |
例えば、法令違反や許可条件違反があった場合に、許可取消しとするか、事業停止命令とするかは、違反の程度などを踏まえて判断されます。
また、職業紹介事業の運営方法そのものに問題がある場合には、改善命令の対象となることがあります。
なお、行政処分を行った職業紹介事業者については、事業者名や処分内容、処分理由などが公表されます。
そのため、行政処分は事業の継続だけでなく、求人企業や求職者からの信用にも大きな影響を与える可能性があります。
7.軽微な手続きミスでも直ちに許可取消しになる?
有料職業紹介事業の許可を取得した後には、さまざまな届出や報告などの義務があります。
例えば、事業所の所在地や役員の変更、職業紹介責任者の変更、毎年の事業報告などです。
これらの手続きについて、提出漏れや遅れがあった場合に、直ちに許可が取り消されるのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、届出の遅れや書類の不備が一度あったという事実だけで、自動的に許可取消しになるわけではありません。
一方、届出義務や報告義務に違反した状態を放置したり、虚偽の報告を行ったりすれば、法令違反として問題になります。
また、職業紹介責任者が退職した場合など、事業運営に必要な要件を満たさなくなったときには、速やかに必要な対応を行うことが重要です。
問題が生じた際には、事情を正確に確認し、必要な届出や是正措置を行うことが大切です。
8.許可申請の段階でも欠格事由の確認が重要
許可取消しを防ぐためには、許可取得後の法令遵守が重要ですが、新規許可申請の段階から確認しておくべき事項もあります。
特に、複数の会社を経営している場合や、他社の役員を兼務している場合には、役員の経歴や兼務先の事業内容などを整理する必要があります。
また、外国人を雇用している会社では、在留資格に応じた就労の可否などについても、適切に確認することが重要です。
許可申請時の代表者や役員について、欠格事由への該当性を十分に確認せずに申請を進めると、後になって問題が判明する可能性があります。
そのため、許可申請書類を作成する前に、会社や役員の適格性を確認しておくことをおすすめします。
役員の兼務については、「申請する会社の役員が他社の役員を兼務している場合」でも詳しく解説しています。
9.よくあるご質問
Q.有料職業紹介事業の許可は、一度取得すれば取り消されませんか?
いいえ。許可取得後であっても、法令上の欠格事由への該当、職業安定法等の違反、許可条件違反などがある場合には、許可取消しの対象となることがあります。
Q.職業紹介事業とは関係のない法律違反でも取消しになりますか?
違反した法令や処分の内容によっては、欠格事由に該当し、許可が取り消される場合があります。実際に2026年には、入管法違反による罰金刑の確定を理由とした許可取消しが行われています。
Q.代表取締役や取締役が刑事処分を受けた場合、会社の許可にも影響しますか?
影響する場合があります。法人の役員が職業安定法上の欠格事由に該当すると、法人の有料職業紹介事業の許可が取り消される可能性があります。実際に、役員の刑事処分を理由とする取消し事例も公表されています。
Q.毎年の事業報告を提出し忘れると、直ちに許可取消しになりますか?
提出を忘れたという事実だけで、自動的に許可取消しになるわけではありません。ただし、事業報告は法令上の義務であり、未提出の放置や虚偽報告などは問題になります。速やかに必要な対応を行うことが重要です。
Q.職業紹介責任者が退職した場合、許可が取り消されますか?
退職したという事実だけで自動的に許可が取り消されるわけではありません。ただし、事業所に必要な責任者を選任できない状態は問題となるため、後任者の選任や必要な手続きを速やかに行う必要があります。
Q.事業停止命令と許可取消しは同じですか?
異なります。事業停止命令は一定期間、事業の全部または一部の停止を命じる処分です。一方、許可取消しは許可自体を取り消す処分です。違反の内容や程度などによって判断されます。
愛知県で有料職業紹介事業の許可申請をお考えの方へ
有料職業紹介事業の許可申請では、資産や事務所、職業紹介責任者などの要件を満たすことが必要です。
しかし、それだけでなく、法人や役員が法令上の欠格事由に該当していないかを確認することも重要です。
また、許可取得後も法令を遵守し、適正な事業運営を継続する必要があります。
当事務所では、愛知県の有料職業紹介事業許可申請に特化し、許可要件や役員の適格性の確認から、申請書類の作成・提出、実地調査への対応までサポートしています。
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※本記事は2026年10月29日時点の職業安定法、職業紹介事業の業務運営要領及び公表された行政処分事例に基づく一般的な解説です。個別の事案について許可取消事由に該当するかどうかや、行政処分の内容は、具体的な事実関係及び法令に基づいて判断されます。